歯周病について
歯周病とは
読んで字のごとく歯牙そのものの病気ではなく歯の周囲の病気です。以前は歯槽膿漏とも呼ばれていたものです。歯周病の症状には以下のようなものがあります。
- 歯茎から出血しやすい
- 口臭がきつい
- 口の中がねばつく
- 歯が浮いた感じがする
- 歯茎が痛い
- 歯茎が腫れる
- 歯茎から膿がでる
- 歯がぐらぐら動く
- 噛むと痛くて噛めない
- 歯肉が下がり(退縮)、歯がしみる
ひどくなると虫歯でもなんでもない歯を抜かなくてはならなくなります。
この疾患は次のような理由で厄介な病気です
( ひどくなるまで自分では気づきにくい )初期の状態では痛みがあることが少ないため、また痛みがあってもほっておくと痛くなくなったりするため、知らないうちに重症になりやすい。「私は歯磨きをあまりしないが虫歯で困ったことは無い!」などとおっしゃる人が重度の歯周病になっていることはよくあること。
( 完治が困難 )歯周病はある意味で生活習慣病であるため、患者さんの努力がなくては現状を維持することすら難しい。また、一度破壊された歯の周囲の組織はなかなか元どおりにならない。定期的なメンテナンスも必要。
( 歯牙喪失後の問題 )歯周病が進行し歯を失った場合、その部分の骨は厚みがなくなるため、ブリッジにするにしても義歯を作るにしてもインプラント(人工歯根)を入れるにしても困難になる。
歯周病の進行
健康な状態
- 歯肉は引き締まった状態
- 色はキレイなピンク色
- 歯周ポケットは1~2mm
歯肉炎
- 歯肉が腫れて赤みがかっており出血しやすくなる
- 歯槽骨(歯を支える骨)は吸収されておらず動揺はない
- 歯周ポケットが健康な歯肉より深くなる
- プラークを除去し、清潔に保てば健康な状態に戻せる
歯周炎(軽度)
- 歯肉の腫れがある
- 歯槽骨も吸収し、歯周ポケットが深くなっていく(4mm以上)
- 歯牙に動揺(横方向)がみられるようになる
- まだ回復の余地あり
歯周炎(中~重度)
- 歯肉は浮腫状になる。歯周ポケットからは出血だけでなく膿もでるようになる
- 歯槽骨の破壊が進みポケットも深くなる(6~8mm)
- 動揺が縦方向にもみられるようになるため噛むと痛みがある
- 体調が悪いとき等に特に浮いた感じになったり、自発的に痛みがでる
- 外科処置の必要性もでてくる
- 抜歯になる可能性が高くなる
歯周病の原因
原因となるのは歯周病原菌といわれる細菌ですが、この細菌は食物の磨き残し(プラークという)に特に繁殖します。プラークはやがて唾液中のカルシウム等をくっつけて硬くなり歯石になります。
歯石には細かい孔がたくさん開いているため、細菌がさらに繁殖しやすい環境になります。歯周病原菌が産出する毒素によっても歯の周囲の組織(歯周組織)は破壊されていきますが、人間の体がこれらの細菌を排除しようと努力すると炎症が増強され結果的に歯周組織の破壊がすすんでしまします。
以上は歯周病の主な原因です。その他に噛み合わせの不良や歯軋り、食べ物が歯と歯の間に挟まりやすい環境、口での呼吸、喫煙などが歯周病を進行させる原因になります。
また、高血圧や糖尿病などの疾患は歯周病を増悪する因子となります(血圧を下げる薬自体に歯肉が腫れる副作用を持つものもあり、その場合は薬を変更すると改善されることもあります)。
歯周病の治療法
まず原因となるものの除去をしなければなりません。つまり プラークと歯石の除去 が主な治療になります(炎症がひどい場合は口腔内の細菌を減らす目的で抗生物質を服用していただくこともある)。
歯石の除去は歯ブラシではできませんので、歯科医師や衛生士がスケーリングという作業で除去します。
歯磨きが上手くできなければすぐにプラークが再度付着してしまいますので歯磨きのやり方を学ぶことも平行してやっていきます。 家庭での歯磨き でしっかり汚れを落とすことができるようになることは非常に重要で、これができなければ歯周病の進行を遅らせることすら難しくなります。
また、 汚れがつきやすい環境を改善 するために歯にぴったり合ってない充填物や冠をやりかえることもあります。
重度の歯周病の場合、上記の治療の後に 外科処置 に移行することもあります。歯と歯肉の境の溝(ポケットという)が深い場合は物理的に清掃が困難になるため外科処置でポケットを浅くするのです。
喫煙が歯周病を進行させる原因となることはいろいろな研究によって証明されている事実です。歯周病に罹患している患者さんでタバコを吸う方は禁煙することも治療になります(実際、歯周病の治療にあたりまず禁煙のカウンセリングをおこない、専門の機関を紹介し禁煙してもらうという歯科医院もあります)。
歯周病の予防
予防で重要なのはやはりプラ-クをしっかり除去して口腔内を清潔に保つことです。
そのためには歯ブラシだけでなく歯間ブラシやフロスといったものを使用しなければなりません(特に歯肉がさがって歯と歯の間の根元に隙間があるような場合)。
歯磨きにそんなに時間をかけられないとおっしゃる方も多いと思いますが、歯磨きの努力を怠っては歯周病の予防はできません。
うがい薬の使用も口腔内の細菌の減少に効果があります。
メンテナンスの重要性
虫歯も治療が終わったらその後ずっと歯医者に来なくてよいということはなく、定期的な検診が必要です。歯周病ではそれ以上に定期健診が重要となります。軽度の歯周病の場合で少なくとも半年に一度の検診が望ましく、重度の歯周病と診断された場合は2~3ヶ月ごとの検診が必要です(場合によっては1ヶ月に一度)。
検診時に歯石が再度沈着しているようなら除去することにより歯周病の進行をある程度おさえることができます。
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